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ナイスコントロール ガリクソン投手からのおくりもの 連載(3)

糖尿病とともに生きてきた(2)

ちょうど、開幕前の春キャンプをしていたある日、僕は気管支炎のような症状に襲われました。ちょうどこの頃、キャンプを見にきた子供達にも沢山風邪がはやっていましたし僕も普通の風邪だと思っていました。そしてたいしたことはないと思いそのまま放置しました。特に熱もでなかったし、自分の体になにかおそろしいことが起こる前触れなどいっさいなかったのです。

ところが、その後数日してから、何か急に疲れが溜るようになりました。この疲れは、練習でつかれる疲労感とはちょっと別のものでした。なにかだるい、気力がでない、いつもと違う、そんな感じだったのです。そして、不思議なことに、精力をつけようと思って、どんどん食事を食べたのですが、ちっとも元気になりませんでした。そのような時には、むしろ、余計疲れがめだちました。そして食べても食べても体重が減っていきました。なぜこんなに食べても体重が減っていくのだろう。この時の僕は、糖尿病のことなど少しも知りませんでしたから、きっと練習がきつかったのかもしれない、大リーグを前にして、いつになく気疲れしているのかな、と誤解していました。

 それからもうひとつ、おかしなことがおこってくるのに気がつきました。喉が乾いてきたのです。僕は小さいころから汗かきで、体の水分がなくなりやすい体質でしたから、水を飲むことは多かったのですが、この時のようにひっきりなしに喉が乾くのは生まれて初めてでした。まるで水に飢えて砂漠を歩く旅人のように、いつも水を求めていました。食事の時はもちろん、練習の合間でも、水をがぶがぶ飲んでも、またすぐ喉が乾いてしまうのです。そしてその内に、夜中までのどの渇きで目がさめるようになりました。ひどい時には、口の中がカラカラで、舌が口に中でひっついてしまって話ができなくなることとありました。それから、夜中に起きるのは喉の渇きばかりではありません。とてもトイレが近くなってきたのです。一日に何度も小水がでました。もちろん夜中も何度もトイレに起きました。なにか、あたかも口から飲んだ水分が体に溜らずに、すべて尿となって直ちに排出されてしまうような感じでした。

 おかしい、とは感じていました。なぜかマウンドに立ってもフラフラしてしまうし、ボールにも力がない。それに、いくら精力をつけようと思って食べても、また水分をとっても、尿の中にそれが溶けていくかのように出ていってしまう。でも、この時の僕は、もう目の前に大リーグのことしかなくて、それ以外のことには気を使っている暇はないくらい、忙しい日々を送っていましたし、まさか自分が病気だとは考えませんでした。体重が減るのは激しい練習のせいだと思っていましたし、暑いから喉が渇くのだと単純に考えていました。そして自分なりにコンディションの立て方が悪かったのかと思い悩んでいました。

 ですから定期健康診断があってその2日後に監督さんからよばれ、糖尿病だと言われた時はショックでした。そして、とても恐ろしくなりました。なさか自分が病気だなんて、、、とても信じられません。自分の耳を疑いました。嘘だって、何度も思いました、どこも痛くないじゃないか。 6フィート3インチ(1m90cm)、200ポンド(91kg)、こんな僕の身体に病気の影が忍び寄っていることはとても理解できませんでした。

 そして糖尿病という病気についても、聞いたことはあるけれども、まったくその実態は知りませんでした。ですから最初はとても恐ろしい病気のイメージを想像しました。そしてまず、治る病気なのか、それが不安でした。もし、治らない病気ならば、僕は大リーグはもちろんのこと、すべての夢を断たれることになるのだろうし、病人らしく何にもできない寂しい人生になるのか、という不安でいっぱいでした。

  僕はこの時、チーム医師のブロドリック先生からこう持ちかけられました。”君がこの病気の治療を始めていくには、2つの方法があります。”と。ひとつは一週間入院して、糖尿病のことをしっかり勉強して自分でコントロールのしかたを身に付ける方法。もうひとつは、通院で一日2時間づつ勉強していく方法です。当時、糖尿病のことを、なにも知らなかった僕は、この際しっかり入院して治療に専念しようと考え入院を選びました。そして野球のことは1週間全く忘れることにしました。しかし病院に入院する荷造りをしながら、もうこの球場にはもどれないかもしれない、そしてピクニックやハイキングにもいけないかもしれない、と思い悲しくてしょうがありませんでした。

 しかし入院してみると、沢山の患者さんがいて、いろいろとこの病気のことを教えてくれました。そしてまずほっとしたことは、この病気を持つのは自分だけではない、ということでした。病院には、小さな子供から老人まで、様々な年齢の人がいて、決して自分だけが特殊な患者ではなかったのです。それに糖尿病なはずなのに、みんなが全く健康な人と変わらないと思うくらい元気に見えました。毎朝、ジョギングしている人もいましたし、みんなで毎朝体操もしてました。キャッチボールをしている人だっていたのです(!)そして、いちばんありがたかったことは、みんなが希望をもっていたことでした。ですから僕もこの病気を早く治して大リーグにすぐもどれるのかもしれない、そう考えました。

 僕は入院するなり、直ちにインスリンというホルモンの注射をうけました。すると、どうでしょう、1日、2日とたつうちに、これまでの自分の状態がうそのように、喉の渇きやだるさがとれてきたのです。この病気は治療できる病気であることを知りました、難病ではなかったのです。

ナイスコントロール!―ガリクソン投手のおくりもの ビル・ガリクソン (著), 鈴木 吉彦 (著) 医歯薬出版株式会社

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