こうしたGLP1タキフィラキシーについての議論において、 分岐点となる論文が発表されたのは、くしくも、私の論文が発表された翌年、2015年のことでした。
それが、
A Randomized, Controlled Trial of 3.0 mg of Liraglutide in Weight Management. Pi-Sunyer X, Astrup A, et al. N Engl J Med. 2015 Jul 2;373(1):11-22. doi: 10.1056/NEJMoa1411892.
というGLP1.comのサイトで、下段に日本語翻訳をしてある論文のことです。
結局、ビクトーザ、一般名、リラグルチドは、GLP1タキフィラキシーがあるがために、どんどん増量ができる、優れた、良い薬剤である。という結論にみちびかれます。
そして、そのタキフィラキシーを利用して、高用量まで、つまり、1日量にして、リラグルチド量にして3mgまで、増量していっても、血糖をさげるという効果は維持でき、しかも、糖尿病の発症予防という早期からの投与にも適しており、さらに、体重を減らす、ウエイト管理ができる薬剤になりえる、という主張の論文だったわけです。
サクセンダ、という薬剤が登場した、その瞬間こそ、GLP1タキフィラキシーは、抗肥満治療においては、「良い事象」、「望ましい事象」と定義された、といって過言ではありません。
結局、この結論を、違う、という反対意見は、少数派になりました。そして、ノボノルディスク社は、他のGLP1受容体作動薬とは異なり、唯一、抗肥満に利用できる、GLP1タキフィラキシーを応用できる薬剤、サクセンダ、をもつ、知名度の高い会社として、再評価されることになったわけです。
ビクトーザは、糖尿病の治療薬の商品名だったので、あえて、それを、サクセンダという別の商品名にし、3.0mgまでの、高用量投与を可能にする薬剤を市場に出すことを発表したのが、たしか、2017年の欧州糖尿病学会での発表だったかと思います。
欧州糖尿病学会の会場は発表の後、スタンディングオベーションで、欧米の医師たちは、こぞって大きな鳴り止まぬ拍手をしてました。(年次に多少のずれがあるのは、お許しくださいね。ブログなので。)
結局、こうした経緯をもって、私たち、日本の糖尿病専門医も、ビクトーザやサクセンダにかぎっていえば、GLP1タキフィラキシーは望ましい現象である、という事実をうけいれざるをえなくなったという歴史があります。
このように、私たち、「糖尿病専門医」でさえも、時に、この「GLP1タキフィラキシー」という用語の正しい使い方(??)を間違うこともあるくらいです。
一般の、GLP1ダイエットを、これから、行おうとしている受診者の皆様が理解に苦しむのは当然のことだろうと思います。