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食欲が増す、が副作用?

GLP1ダイエット、つまり、サクセンダやビクトーザ(以下、まとめてリラグリチドと略します)の海外の文書や論文を読んでいる時に、あるとき、「食欲が増すことが副作用」という文言を読んだ事があります。


その当時は、ダイエットの真っ盛り中で体重が減る事を日々、喜んでいた時期でした。「食欲が低下しているのに満足」という気分が続いていたので、その真の意味、真の意図には、気がつきませんでした。


でもそろそろリラグリチドを注射しはじめてから約1年になります。ようやく、今になって「食欲が増す事が副作用」の意味が、少し理解できてきたような気がします。


リラグリチド(サクセンダやビクトーザの一般名)を注射していると、少しの食事で、すぐ満腹になります。それが、すごく心地よいし我慢も要らないし、楽なダイエット法です。でした。今でもそうです。


でも、それが1年も続いてしまうと、幸せで満腹であること、が当然のような錯覚に陥ってしまいます。なにせ、いつもお腹が空かないのですから。お腹を空いている自分が想像できなくなってしまっています。


時々、お腹がすいた気分を味わってみたい、という、超贅沢な気分になったら、その時は、リラグリチドの注射を辞めればいいだけ、です。でも、1日1.8 mg〜2.4 mgを毎日、注射していると、1日あるいは2日、注射を辞めてもお腹はすきません。


つまり「お腹がすかなくなってしまった。」という事が、なにかしら不便に感じることがあります。超贅沢な悩みです。


この感覚を、「食欲が増してしまうことが副作用」、「食欲に麻痺してしまった事による副作用」と、表現するのかもしれません。


体重を気にせず、満腹である事を気にせず、が恒常化します。そして、人間ですから、心の底からお腹が空きたい、と思うことがあるはずなのに、この1年間は、それがなかったような気がします。


今のところ、それは「寂しさ」には、繋がってはいません。仕事が忙しすぎて、そういう寂しがっている暇はないからです。


でも、もし「仕事もなくて、フリーで」という状況であったなら、「お腹が空かない、満腹の自分」に、いつも満足するだろうか、、と思うことがあります。


実際、「抗肥満薬」の副作用の中には、自殺、があります。本物の「抗肥満薬」で、大ヒット製品であった「リモナバン」は、それがあって発売中止になりました。


それが発表された頃、私自身はその治験の渦中にいました。発売元の「サノフィ社」とは、常に連絡をとりあっており、情報交換を絶やさないでいた頃でした。


ですから、その中止発表の知らせを聞いた時には、落胆もし、悔しいという思いもありましたし、まず考えられる理由としては、てっきり、

「過食をしてストレスを解消していた肥満者にとって、内服薬の抗肥満薬によって、解消できるはずのストレスが、抗肥満薬の効能で”消去”される事で、ストレスの発散場所がなくなり、それで自殺をしたくなるのだろう」、

それが第一の考察でした。ですが、リラグリチドを注射してから1年。その考察が、少し変わってきました。


「たまには、お腹が空きたい、と思う自分が、お腹が空くことができない事が、ストレス」

そんな「些細」な気分が理解できるわけです。

ビクトーザの添付文書には、こういう気分の表現は、まず目にしません。


が、サクセンダになると、とたんに、こういう添付文書の表現が目の中に飛び込んできました。だから最近は、こんな風に思うようにしてます。


GLP1ダイエットが、自殺者を増やさない理由は、ただひとつ。

それは、「注射」であることなのでしょう。


つまり、「いつでも辞めようと思えば辞めれて、数日で、その効果を消し去れる権利があること」、内服薬は後遺症が残るけど、注射は注射液が体内にある間しか、作用してくれないから、辞めれる時に好きに辞めれて空腹をとりもどせることが「自由」です。それが、空腹を時々、感じることができ、「ストレス」解消につながります。


好きな時に、空腹を取り戻せるから「自殺したい」という気分を取り除けるのでしょう。だからこのGLP1ダイエットは内服薬ではなく、作用時間が短い「注射」である事のほうが安全なのでしょう。特に臨床において「安全性」は、最も大切な事柄(issue)ですから。


リラグリチドを1日1.8mg以上、サクセンダなら2.4mgか、3mgを数ヶ月、継続した方には、このような屈折した感情を理解していただけるかもしれません。


とにもかくにも、GLP1ダイエットは、その場、その場、注射する量、期間、タイミングで、満腹感を幸せに感じる時と不幸せに感じる時が入り乱れます。


1日量0.9mg、1.2mgで全然、減量ができず、焦りを感じていた時期もあった事を思い出します。その当時を思い起こすと、まるで大逆点の発想になります。


「ダイエット」という目的においては「合目的」ではあるものの、「食欲が増すことが副作用」と感じるまでには、相当の時間が必要でした。やはり「サイエンス」は、奥が深いです。


こういう体験をすると、ふと思います。

糖尿病の患者さんたちは、何年も、この感覚を持続しているわけです。私達、糖尿病専門医はそれを処方し促進している側の立場です。1年や2年、自分で体験してみるには、GLP1ダイエットは、糖尿病専門医なら、皆体験して、この「哲学的」な処方の妙、臨床技術を、各自が実感してみてもいいのでは、と思います。


2ヶ月後(おそらく2019年9月末)には、リラグリチド(糖尿病治療としては、ビクトーザ)の至適最大用量が、1.8mgまでの増量が日本国で承認されています。かなり、この問題は臨床現場に波紋を投げかけるかもしれません。



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