ハイプ・サイクル(英語: hype cycle、ハイプ曲線)は、特定の技術の成熟度、採用度、社会への適用度を示す図である。ガートナー社がこの用語を造り出した[1]。
とWikipediaにあります。この曲線をみると、私たち糖尿病専門医が、どのように、GLP1注射薬を観ていたか、と似ている箇所が複数、あります。
GLP1注射薬は、バイエッタとビクトーザから始まりました。日本中から、バイエッタをやビクトーザ求めて、私の外来に訪れました。まだ、他の糖尿病専門医も、この薬の処方をためらっていた頃。都内の有名病院でも、わずか10名、くらいという時点で、すでに私の外来では100名近い糖尿病患者さんが、バイエッタか、ビクトーザを利用していました。
その時は、体重を落とす力が強かったのは、明らかにバイエッタでした。ビクトーザは、注射していると、悪心、嘔吐感が消えてしまうので、弱い薬剤にみえていたのでした。
しかも海外用量の半量0.9mgしか処方できませんでした。当時は、SU剤という薬剤としか併用が認められていなかったため、多くの患者さんたちが、リバウンドを繰り返していました。
その後、GLP1注射薬は、ビデュリオン、リキスミアが発売され、より胃の排泄速度を抑える薬剤が主流になり、体重は減りますが、脱落者も増えるという微妙なバランスをとる時期がありました。
ビクトーザは、弱い薬剤と考えられ、一度は、GLP1注射薬の中で最も処方したくない薬剤でもあったのです。ところが、そのビクトーザの、GLP1タキフィラキシーを逆手にとって、吐き気が最も少ないがゆえに、増量が可能なGLP1注射薬として再認識され、なんと、2.4mg, 3.0 mg, までの投薬が可能となり、ビクトーザを超えた容量を注射できる薬剤が、「サクセンダ」と、呼ばれて、「抗肥満治療薬」となったわけです。
テクノロジーの世界でも、こういう「発想の転換」で用途を変えることはよくあります。
EDの薬、バイアグラも、最初は血圧をさげる薬として開発されていたと聞いています。プロペシアは、頭の髪の毛が少ないことと、前立腺肥大とが関係し、今では、どちらの用途でも、処方できるようになっています。
ビクトーザも、サクセンダも、「胃排出速度を抑制する作用が弱いことが、かえって幸いし、抗肥満薬」となった薬剤なわけで、医学の世界の不思議さを、感じます。
そして、後になって、「食欲中枢を抑制するGLP1受容体が視床下部にあることがわかった。増量によって、その中枢作用の効果のほうが強くなった。」という歴史をたどったと聞いています。
ただし、現在、モニターをお願いしている方々からの、お返事を、お待ちしているところですが、あくまで、2.4mg, 3.0mg は、1日だけでなく、数日、連日投薬してから、どう感じるかを、ご報告いただきますよう、お願いいたします。
それはなぜか、は、もっと難しい話になりますので、 また後日、説明させていただきます。
いつも、難しい話で、すみません。現役の内科医や、医学部の後輩たちが読んでも理解できない内容かもしれません。(いわぶっちゃんは、どうでしょうね。。?)。